Grazioso 優美に
グラツィオーソな表情を持つ、理想の女性が一人だけいるそうです。
さて・・・
ヴェネーツィアに浮かぶ島、ブラーノ島はヴェネツィアン・レースで有名です。今はほとんどが観光客用に器械で簡単に編まれた偽物が売られていますが、手で編まれた本物はたいへん美しく、手工芸品というより、芸術作品です。まさにグラツィオーソな刺繍といえる美しさを持っているのです。
我が家に一つくらいぜひ・・・と思うのですが、本物は値段も目が飛び出るほど高価です。
それだけの時間と労力がかかっていますから仕方がありませんね。
ブラーノ島より更に有名なのがムラーノ島。ヴェネツィアン・グラスでよく知られた島ですね。
そのヴェネツィアン・グラスにもグラツィオーソの極地をきわめた作品がたくさん見られます。
こんな<優美>、<上品>、<洗練> を表現する言葉がグラツィオーソです。
したがって、音にもその美しさと愛情が深く注がれなければいけません。決して粗野にならず、ていねいに美しい柔らかさを持つ音を心から紡ぎだすことが大切です。
デリケートな華奢な表情ですから、テンポだってそう速くはならないでしょう。
柔らかく、軽やかに、優しく愛撫するような雰囲気に包まれなくてはいけません。
グラツィオーソの語源は、ラテン語のグラーティアムです。これはグラートゥス「好きな、好みに合う」「感謝」「喜び」「ありがたさ」「慈悲」「寛大さ」という言葉から派生しました。
また名詞形グラーツィアには「許し」という要素も含まれます。
このようにグラツィオーソは最高に美しい状態を表しています。
優しく、上品で、慈悲深く、寛大で、洗練されて・・・こんな表情を完璧に持つ人などいないと思いますが、ただ一人、理想の女性が存在します。
聖母マリアです。彼女の姿こそ、グラツィオーソの理想的な表情なのです。
またグラーツィアという言葉はイタリアでは人名によく使われています。イタリアにはマリアさんも多いですが、グラーツィアさんもたくさんいるのですよ。
「これで納得! よくわかる音楽用語のはなし―イタリアの日常会話から学ぶ」
関
孝弘, ラーゴ・マリアンジェラ (全音楽譜出版社) からの抜粋、要約
(tomo)
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