Andante の次は Moderato です。
これまで私としては Moderato は快適な、自分が一番気持ちいいと感じる速さというように思ってきました。
さて、本家ではどんな感じなのでしょうか。


一般的に日本人は自分自身を「中流」であると意識し続けてきました。その根底には人とあまり違うのを嫌う傾向があります。
「中庸」、これも日本人が好きな言葉ですね。
イタリア語では、抑制され均整の取れた感覚、つまり中庸を「モデラート」と呼びます。まさにど真ん中、中くらいを意味する言葉がモデラートです。

もちろん日常会話でもよく使われますが、少しニュアンスが違います。
例えば美容院で「どのようにカットしましょうか」ときかれ、「モデラートに」と答えれば、「一番自分にあった長さに」という意味です。
ここでは、「自分に合った」というところがポイントです。
ただ単に普通の長さにカットしてもらうだけではなく、大切なのはそれぞれ <個性> を最も程よくひきたたせる、という意味合いが根底に流れているということです。

モデラートには中庸と同時に、<分別> <思慮> が働いているというニュアンスがあります。
強風でも無風でもない心地よい風は「モデラートな風」
暑くも寒くもない日は「モデラートな気候」と、こんな感じに使われます。

では、音楽の速さとしてはどこに位置するのでしょうか?
目安としてはアッレーグロとアンダンテの間にあると考えてください。


 「これで納得! よくわかる音楽用語のはなし―イタリアの日常会話から学ぶ」
    関 孝弘, ラーゴ・マリアンジェラ (全音楽譜出版社)  からの抜粋、要約


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