tomoさんの趣味悠々

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奏法

音楽用語(奏法) (11) Ritenuto

テヌート、ソステヌートと続きました。もうひとつ似た言葉があります。
リテヌートです。

テヌート、ソステヌート、リテヌートはみな同じグループの言葉です。
しかし、おおもとの意味になるのはテヌート、つまり「保つ」です。そして、ソステヌートやリテヌートはそれに加えて、さらに「どのように保つ」か、という状態を表す言葉です。
ソステヌートの <ソス> は「下から」を意味していました。
一方、リテヌートの <> は強調を意味します。ですから「もっと、再び保つ」というような感じになります。
上から押さえ保たれた状態から、さらにもっと強く押さえられる様子を想像してください。
さらにリテヌートには <自制して慎みを持って、用心して思慮分別に欠けることなく> というような意味もあります。


音楽用語辞典では、一般的に「急に速度をゆるめて」と記されているようです。
上から押さえられた状態で、控えめに慎重さを保つとなれば、結果として速度は遅くなります。
理にかなっていますね。決して「遅くしなさい」という意味ではありません。
でもどのような遅さなのかイメージ出来なければ無味乾燥で、ただ物理的に遅い世界になってしまうことでしょう。

演奏に際しては、たいていはだんだん遅くしていくのではなく、その部分だけを遅くするのが慣例ですが、もちろん例外のケースもあります。そんなときは前後の関係の雰囲気をつかみ、遅くするタイミングをはかるようにすることが大切です。


  「これで納得! よくわかる音楽用語のはなし―イタリアの日常会話から学ぶ」
    関 孝弘, ラーゴ・マリアンジェラ (全音楽譜出版社)  からの抜粋、要約


 

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音楽用語(奏法) (10) Tenuto/Sostenuto

音符の上に横棒を引いたテヌートですが、どんな感じで吹かれていますか?
ただ単に長くというのではなく、なんとなく粘った感じとか、引きずった感じで吹いている気がしますが・・・


世界には似て非なるものがあります。音楽用語の世界で言うと、それはテヌートとソステヌート。
音楽辞典には次のように書かれています。
  テヌート   :音を保持して、音の長さを充分に保って演奏すること
  ソステヌート:音を保持して、各音符を充分に

なんだか同じような説明でよくわかりませんね。これでは意味を同じように捉えてしまっている方も多いと思います。
実は、この2つの音楽用語には正反対の意味が存在しているのですよ。


まずはテヌート
テヌートはテネーレという動詞が原形です。テネーレには「逃げないように引き留める、押さえておく」、「落ちないように、動かないように手で押さえる」というような意味があります。
「ちょっと! このバッグを持っててくれない?」 こういうとき、「バッグをテヌートして!」と言っているわけです。
バッグをテヌートするとき、普通は上から押さえるように持ちますね。
この上から押さえる様子、それがテヌートです。

はしごのような不安定な場所を登るとき、「動かないように、手で押さえててね!」と言います。
こういう場合は「はしごをテヌートする」ということになるわけです。
きちんと押さえて、ある一定の状態を保つようにするのがテヌートです。

では、それに対して、ソステヌートってどんな言葉なのでしょうか。
ソステヌートの原形の動詞は <下から支える> と言う意味を持つ動詞ソステネーレです。
ソステヌートそのものにも <下から支えられる> というニュアンスが残っています。
テヌートは上から押さえましたが、ソステヌートは下から支えるわけです。

学費などを援助して費用を支えてあげるのもソステヌートですし、精神的に苦しんでいるグラーヴェな友人などを支えるのもソステヌート、橋は橋げたによってソステヌートされていますし、植えられたばかりの木は添え木によってソステヌートされています。
言葉としては、結果的に両方とも <保つ> となりますが、その保ち方はまったく逆なのです。


音楽をテヌート~ソステヌートしていく感覚・・・それにはそれぞれの演奏者が、イメージをふくらませる必要がありますが、テヌートが音符をしっかりつかみ、しがみついている様子を表すならば、
ソステヌートは下から音を支えるイメージとなります。
大事に支えるのですから、いきおいテンポも <注意深く進む速度> となります。したがって、<ズンズンと速く進む> ことはできません。何かを支えて歩くと、何も持たずに歩くよりも速度が落ちるのと似ています。
さあ、皆さんはこのふたつの音楽用語の違いをどうやって演奏に反映させますか?


 「これで納得! よくわかる音楽用語のはなし―イタリアの日常会話から学ぶ」
    関 孝弘, ラーゴ・マリアンジェラ (全音楽譜出版社)  からの抜粋、要約


 

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音楽用語(奏法) (8) Staccato

強い絆で結ばれた状態がレガートでしたが、そのレガートと反対の意味を持つ音楽用語がスタッカートです。

このスタッカート、ほとんどの人が <切る> というイメージで捉えているのではないでしょうか。
実際、私たちも小学生時代から「スタッカートは『音を切って』あるいは『音を短く切って』という意味ですよ」と、教え込まれてきたのですから仕方ありません。

でも、残念ながら
スタッカートには <切る> という意味は全くないのです。
スタッカートは <切る> のではなく「離れた、分離した」という意味です。ですから、原形動詞スタッカーレ Staccare の意味も「離す、分離させる」です。

イタリアでは夕方5時になると、労働者たちは即座に仕事を終わらせ、たくさんの車がいっせいに工場の門を走り抜けて行きます。家路に急ぐ瞬間です。
仕事からスタッカートして、解放される彼らの顔は幸せに満ちています。家族と強くレガートされている彼らは、いち早く仕事からスタッカートして家に向かい、家族と幸せな時間を過ごすのです。
スポーツなどで1位が2位を大きく引き離している、というような状況では、「1位が2位を大きくスタッカートしていま~す」となります。

どれも <切る> ではなく、あくまでも <離れる> という意味です。
音が離れていれば、もうそれはスタッカート。
ということはレガート(音を結ぶ)でなければ、基本的にはすべてスタッカートということになります。
ですからノン・レガート non legato もスタッカートの仲間といってもいいのです。

ある辞典では、スタッカートは、音の長さが1/2になる。そしてメッゾ・スタッカート mezzo staccato は3/4などになると定義しています。しかし、そんな風に覚えてしまうのは大変危険です。
だって、そんな決まりなどないのですから。

では「音を離す」という本来の意味を音楽としてどうやって表現すればいいの? そう思案されることでしょう。
でも、それもケースバイケース、音楽のいろいろな要素を考慮して、表現することが大切です。
ある時はたいへん短く、またあるときは長めになるのは当然のこと。
画一化された「短く切る」というアプローチだけは避けたいものです。


  「これで納得! よくわかる音楽用語のはなし―イタリアの日常会話から学ぶ」
     関 孝弘, ラーゴ・マリアンジェラ (全音楽譜出版社)  からの抜粋、要約

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バロックやルネサンスの曲では、スタッカートの記号「・」が出てくることはそれほど多くないと思います。
ただ、軽やかに短めに演奏することはよくあるのではないでしょうか。
あえてスタッカートと意識するよりも、曲の中でいろいろな長さを考えたり試したりすればいいのかなと思います。



 

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音楽用語(奏法) (7) Legato

音楽用語(奏法) (2) ノンレガート/レガート/ポルタート/スタッカートの項で書きましたが、田中せい子先生の「リコーダーのタンギング」の本では、「レガートとはイタリア語で、「つながった」という意味で、通常スラーを用いて表される」と書かれていました。

さて、日常ではどんな感じに使われるんでしょう。

イタリアの郵便事情はお世辞にもあまり良いとは言えません。なにせ船便で送ると到着まで、大体3カ月もかかるとなると心配なのが「梱包」の状態。きちんと包装して紐で強くしばっていないと、荷物が破損してしまう恐れがあります。
こんな時、イタリア人は「荷物を紐できちんとレガートして梱包する」といいます。

ある時、妻(マリアンジェラ)が入院し、1週間ほど家を空け、私(孝弘)が家事をする羽目になったことがあります。家事はそれほど苦にならないほうなのですが、ひとつだけ手を焼いたことがあります。
それは毎朝子どもの髪の毛を結ぶことでした。三つ編みがきちんとなるように髪を結んで送り出す・・・、
こんな時にも「髪をレガートする」といいます。
このように紐、綱などで縛り、結んで、1つにした状態がレガートです。犬をリードでつなぐのもレガート。

「レガートの意味は?」と問われると、「なめらかに、音を切らずに」とだいたいの人がそう答えます。
もちろんプロの演奏家も例外ではありません。しかし、レガートには今の例からもわかるように、「滑らかに、音を切らずに」という意味はないのです。

おそらく音と音が結びつけられ1つになった状態「レガート」が、やがて <音と音がつながり、離れないように演奏する>・・・そんな風に意味が転換して、現在の定義につながっていったのでしょう。
レガートには紐や綱、鎖などよく曲がり柔軟性のあるもので、きちんと結ぶというイメージがあります。
結ぶ対象は物でも人でもかまいません。


  「これで納得! よくわかる音楽用語のはなし―イタリアの日常会話から学ぶ」
     関 孝弘, ラーゴ・マリアンジェラ (全音楽譜出版社)  からの抜粋、要約


 

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音楽用語(奏法) (6) Fermata

もしフェルマータはどういう意味?と聞かれたら、「音を延ばす」と答える方がほとんどではないでしょうか。
でも・・・・


バスは生活の足として、とても大切な交通機関です。もちろんイタリアでも、バスは市民の移動に欠かせない交通手段です。
ところで
イタリアのバス停、よーく見ると音楽用語として使われていることばに出くわします。
フェルマータ です。

「へぇ~、バス停のことをフェルマータっていうんだ、おもしろ~い」なんて、感心する声が聞こえてきそうです。
日本ではほとんど路面電車が消えてしまいましたが、イタリアではまだ路面電車が活躍しています。
路面電車の停留所、それもまたフェルマータと呼びます。
ちなみに鉄道の駅はフェルマータではなくスタツィオーネ(英語のステーション)です。

音楽用語としては一般的に「音を延ばす」とされています。
音楽用語辞典によっては <音を2倍延ばす、3倍伸ばす> と数学的に決定付けられたりしていますが、実際のフェルマータには「延ばす」という意味はありません

ファルマータはある動き、時間の流れの中断を意味する言葉です。つまり <運動の停止、時間の停止> なのです。
バス停は走行を停止して、乗客を乗り降りさせる場所ですね。ですからフェルマータという停止を意味する言葉が停留所になったというわけです。


フェルマータが楽譜上に初めて記されたのは、1400年代初期のことですが、1700年代には曲の途中につけられたフェルマータの部分で停止して、「即興演奏を挿入する」という意味にも使われたことがあります。そして、この形が進化して現在の協奏曲で聴かれるような、ソリストによるカデンツに発展していったのです。
フェルマータというのはイタリア語なのですが、実を言うとイタリアではフェルマータ記号のことをフェルマータといわず、「コローナ」(corona)といいます。コローナとは「冠」という意味です。

「これで納得! よくわかる音楽用語のはなし―イタリアの日常会話から学ぶ」
  関 孝弘, ラーゴ・マリアンジェラ (全音楽譜出版社)  からの抜粋、要約


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以前の先生のレッスンの中で、フェルマータについてお話されたとき、「拍を数えない」とおっしゃったことがあったように思います。
これも、なるほど~ と思ったものです。




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